2011年12月20日火曜日

労働者とは-労基法上-

労働者とは、という「労働者概念」は基本的なところである。労基法は、「使用される者で、賃金が支払われる者」と定義している。

「使用」性
1.仕事の等への諾否の自由の有無(諾否の自由があれば使用性は弱くなる)
2.業務遂行上式監督の有無
3.勤務時間・勤務場所の拘束性の有無
4.他人による代替性の有無(他人によって代替可能であれば使用性は弱くなる)

「賃金」性
 報酬が時間単位で計算されるなど労務提供の時間の長さに応じて報酬額が決まる場合には、チキン゛んとしての性格(労務対償性)が強くなる(逆に時間でなく仕事の成果に対して報酬が支払われているときは賃金性は弱くなる)

「使用」性や「賃金」性のみでは労働者性の判断が困難な場合
 事業性の有無(機械・器具の負担、報酬の高額性)
専属の程度(他社の業務への従事が事実上制約されている)
 公租公課の負担
  を判断の補強要素


水町勇一郎『労働法』に実際の裁判での判断がでているので抜書きをしておこう。

1.業務遂行について裁量性が高い者
・新宿労基署長(映画撮影技師)事件・東京高判H14.7.11労判832号13頁
  フリーの映画撮影技師の労働者性を肯定
・関西医科大学研修医(未払い賃金)事・最二小判H17.6.3民集59巻5号938頁
  研修医 肯定
・国・磐田労基署長(レースライダー)事件・東京高判H19.11.7労判955号32頁
  一年契約のバイクレーサー 否定

2.零細下請業者的な者
・長崎労基署長事件・長崎地判S63.1.26労判512号60頁
  潜水夫 否定
・日田労基署長事件・福岡高判S63.1.28労判512号53頁
  山林作業の山仙道 否定
・藤沢労基署長(大工負傷)事件・最一小判H19.6.28労判940号11頁
  マンション建築工事の手間請け大工 否定

3.契約形態が特殊な者
・山崎証券事件・最一小判S36.5.25民集15巻絵号1322頁
  証券業者の外務員 否定
・日本瓦斯事件・鹿児島地判S48.8.8判時721号96頁
  ガス料金集金人 肯定
・ブレックス・ブレッディ事件・大阪地判H18.8.31労判925号66頁
  フランチャイズ店の店長 否定
・国・千葉労基署長(県民共済生協普及員)事件・東京地判H20.2.28労判962号24頁
  パンフレットを配布する普及員 肯定

4.役員・管理職
・大阪中央労基署長(岡崎)事件・大阪地判H15.10.29労判866号58頁
  取締役 肯定

 こんなふうに並べてみるとよくわかるような気がする。

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