2010年12月17日金曜日

『デジタル時代の著作権』


 野口祐子『デジタル時代の著作権』(ちくま新書,2010-10-10 286頁)を読んだ。なかなか刺激的な本である。著作権制度の古きたずね新しきを知るということであろう。コピーする権利、copyrightからデジタル時代はコピーが基本となっている。そのあたりの法的な課題や展望などが論じられている。

 目次は以下のとおり。

序章 なぜ、今、著作権なのか
 身近になった著作権
 王様のたとえ話にみる著作権の問題
 この本の構成

第一章 著作権が保護するもの
 著作権は事実とアイディアは保護しない
 創作性
 フォントに著作権はあるか
 ほとんどの作品は著作権で保護されている
 例外規定-私的複製
 社会にプラスの効果を生む利用も自由に
 裁定制度とその問題
 著作隣接権
 著作権法の意義と海賊版
 著作権にバランスを

第二章 ゆらぐ著作権-その歴史と現代の課題
 十九世紀-現在の著作権制度の基礎ができたとき
 ベルヌ条約の枠組みは、当時はとても合理的だった
 二十世紀-増築の時代
 二十世紀末から二十一世紀-デジタル・ネットワークの時代
 デジタル技術と著作権の根本的なねじれ
 デジタル技術では「複製」が基本?
 使用か?複製か?
 一時的蓄積に対する日本の対応
 グレーな上京を作ってしまった文化庁の対応
 チープ革命と著作権
 著作物のタイプが多様化したことによるもう一つの問題点
 著作権の大衆化-業界法からお茶の間法へ
 無方式主義が生んだ問題
 著作権法の悲劇の本資

第三章 技術と法律のいたちごっこ-間接侵害について
 直接侵害の例
 間接侵害という考え方
 米国の考え方の原則-寄与侵害と代位侵害
 ソニー判決
 ナップスター判決
 グロックスター判決
 日本における間接侵害の状況
 カラオケ法理
 ファイルローグ事件
 ウィにー事件
 ロクラク事件
 日本での立法の動き

第四章 ハリウッドが著作権の世界を動かす
 ハリウッドという存在
 WIPO著作権条約
 ACTA
 著作権保護技術(DRM)について
 DRMの利点
 DRM保護法制-日米比較
 技術開発への打撃-エド・フェルトン事件
 スクリャロフ事件
 米国のDRM保護法制の問題点
 崩れる自由と規制のバランス
 著作権機関延長の何が問題なのか
 法律・技術・市場・規範意識の四要素の組み合わせて
 
第五章 科学の世界と著作権
 多様化した著作物の引き起こす問題
 科学技術と著作権
 広まる科学データの共有
 世界のデータ共有の流れ
 科学データの共有を推し進める米国
 共有制作の裏にある資金の最大効率化と研究の加速
 日本の状況
 日本でのデータ共有
 私的資金による研究の共有
 データ共有への法的課題
 科学における事実とアイディアと著作権
 データベースの創作性
 共有のためのライセンス
 サイエンス・コモンズ
 その他の法的課題

第六章 柔軟な著作権制度へ-フェア・ユースとクリエイティブ・コモンズ
 今、なぜフェア・ユースなのか-例外規定の重要性
 個別例外規定とその問題点
 一般例外規定導入の機運
 米国のフェア・ユース
 フェア・ユースのメリット
 フェア・ユースのデメリット
 予測可能性と柔軟性のトレードオフ
 原則と例外を転換してオープンな流通制度へ-クリエイティブ・コモンズ
 CCライセンスの仕組み
 CCライセンスの実証的な側面
 オープン・ライセンスの意義
 二つのライセンス
 ライセンスの標準化と互換性
 ライセンスの切り替え-ウィキペディアの教訓

終章 これからの著作権制度で考えること
 新しい技術の恩恵をどう考えるか
 新しいサービスに対するアプローチ
 権利者のインセンティブとコンテンツの流通について考える
 囲い込みと露出のバランス
 ライセンスの社会的意義
 強制許諾制度とその課題
 未来の著作権制度は登録を
 禁止し合う社会か、許し合う社会か

あとがき

参考文献

0 件のコメント:

コメントを投稿