2010年9月19日日曜日

『帝国陸軍の栄光と転落』


 別宮暖朗『帝国陸軍の栄光と転落』(文春新書,2010)を読んだ。今まで小説、歴史書などで読んでいたのとかなり見解が違う。それがなるほどと思われる。山縣の人事、乃木の戦い方、メッケルの評価、永田鉄人の思想や評価などなど。おもしろい。人事の評価はなかなか絶妙。陸軍大臣を出さないで内閣をつぶすのは人事権の問題との見方は納得。

 最初から参謀本部は、動員計画を作るためとか、一つひとつ軍の組織を改めて認識をした。

目次

はじめに

第一章 戦争という芸術-参謀本部の誕生
 戦争をビジネスのように戦う
 招聘されためっけるは二流参謀
 鎮台制、軍団とは何か
 師団制の採用と郷土連隊主義
 参謀本部の成立
 メッケルの専門、応用戦術とは何か?
 ドイツ参謀本部に学んだ功と罪

第二章 陸海二元統帥の罠-日清戦争
 主権線と利益線
 陸軍か海軍か
 日清戦争の勃発
 司令官をクビになった山縣有朋

第三章 外交と軍事-日英同盟
 ドイツ陸軍と帝国陸軍
 『対露作戦計画』をつくった田村怡与造
 日英同盟に反対した伊藤・山縣
 海軍のドン、山本権兵衛の秘策
 無隣庵会議の真相
 カヤの外の児玉源太郎、スネる桂太郎

第四章 指揮官か、参謀か-日露戦争
 急遽つくられた『新作戦計画』
 出港してから決めた上陸作戦
 独断専行の勝利
 人類史上最大の会戦
 大胆不敵な乃木軍
 まだ戦えた日本軍
 勇敢な指揮官と無能な参謀たち

第五章 統帥権は悪か-派閥抗争
 少ない勝者の配当
 山縣の死と石地蔵の如き皇太子
 バーデンバーデンの密約
 「統帥権が日本を滅ぼした」は本当か・
 ドンになりそこねた田中義一
 統帥権独立とはあくまで戦時
 三月事件の黒幕は誰か
 満州事変
 荒木貞夫の依怙贔屓人事
 永田鉄山斬殺事件
 二・二六事件の闇

第六章 官僚化するエリート-統制経済
 予備役にされる大将たち
 首相候補にピストルを
 本分を忘れた高級軍人
 石原莞爾の計画経済
 統制派が日本経済を破壊した
 遺産を食い潰す政治軍人

第七章 組織の崩壊-太平洋戦争
 支那事変は侵略戦争なのか
 近衛文麿の大罪
 ドイツ以上の統制経済の失敗
 太平洋戦争は海軍の戦争だった
 危機においてサラリーマン化した軍人たち

あと書き

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